パタゴニアの営団丸ノ内線500形廃車体群

アルゼンチン ブエノスアイレス地下鉄B線788号車廃車体 元営団丸ノ内線500形788号車 アルゼンチンのネウケン州アニェロ県アニェロ町にて放置されている営団丸ノ内線500形788号車ほか8両。全車ブエノスアイレス地下鉄B線で活躍していた。

時間距離では日本から最も遠い所にある丸ノ内線500形の廃車体群を見てきた。


2016年9月にに現地紙の記事や鉄道情報サイト上で、地下鉄B線で活躍した丸ノ内線500形が、ショッピングセンターとして活用する為に搬入されたことを知り、ショッピングモールを見に行きたいと思うようになった。現地民によるSNSの投稿を随時チェックしていたのだが、一向にショッピングセンターとして活用されることなく、廃車体が日々荒廃する様子に心を痛めていたが、つい先日、時間に空きができたのでほぼ勢い任せで見に行ってきた。なお開発業者の資金難や物価上昇によりショッピングセンターの計画は凍結されているようであるが、ホームページはまだ残っている。

廃車体群の場所まではブエノスアイレスから約1100kmの場所にある。ホルヘニューベリー空港からネウケン空港まで約1000km、アルゼンチンの国内線で約1時間半程度。ネウケン空港から放置場所のアニェロまでは約100km、車で2時間程度かかる。航空会社は複数就航しているが、アルゼンチン航空を選択した。

空港からの足はレンタカーにした。予約したクラスはマニュアル車で、丸ノ内線500形を思わせるような赤色の日産マーチ5MTが配車された。アルゼンチンでは日本国内の警察等で申請可能な国外運転免許証で運転が可能。右側通行で、車は左ハンドルとなる。方向指示器とワイパーのスイッチの配置が日本国内向けの国産車とは逆なので、無意識に操作するとウインカーを出すつもりが、ワイパーを操作しまうことが何度かあったがすぐに慣れた。マニュアル車を運転をするのは教習所以来であったため、最初は半クラッチと変速の感覚を思い出しながらの運転となった。

放置場所への行き方はグーグルマップ頼った。マーチにはカーナビは無くオーディオプレイヤーのみ装備されていた。行きは早く丸ノ内線500形の姿を見たい一心から最短ルートで設定したところ、とんでもないルートに案内されてしまった。未舗装のデコボコ道なのである。荒涼とした赤い土の平野に真っすぐ敷かれたダートコースは、ゲンコツ台の丸い石が転がっており、30km/h以上出すと車体が激しく振動し、カメラが壊れそうな程。マーチでこんな道を走ってはいけないと思いながら走っていると、このデコボコ道をトヨタのハイラックスなどのラダーフレームで四輪駆動のタフなピックアップトラックに乗った地元ドライバーたちが、土煙を上げてこちらの倍以上の速度で追い越し駆け抜けて遠くに消えて行く。ラジオの電波が届きにくくなってきた事から、スマートフォンを見ると圏外と表示されていたが、グーグルマップは案内を継続していた。車窓は周囲を見渡す限り平野で人家も何も無い。こんな僻地で故障やパンクは困るぞと無事を祈りながら、とても長く感じた未舗装路を区間抜け、国道51号線に接続した。舗装路の有り難みをしみじみと感じたのであった。

国道7号線を走っていると、馬と衝突し路肩に停車しているピックアップトラックが停まっていた。レッカー車もそばにいた。ピックアップトラックの前面のバンパーとボンネットは激しく凹損し、一目で自走不可能と分かる程の大破。野生なのか放牧されているのか分からない馬も見るも無惨な姿になっていた。もし仮に事故に遭ってしまうと救援をカステジャーノで頼まなければならないので、安全運転に徹した。最高時速は110km/hであるが、80-90km/hで流すトレーラーの後ろに付いていくのが最良と考えた。地元民の車やタフなピックアップは130km/h以上の速度で追い越していった。途中、数キロに渡っての舗装工事箇所があり、路肩の未舗装路に迂回させられ低速走行する区間もあった。工事区間が終了し高速走行に戻ると、例の廃車体群が見えてきた。早く見たかったが、慣れない環境での運転で、路上教習初日ぐらいの神経をつかったのと、強い日差しに乾燥した空気と相まって、喉がカラッカラに乾いたことから、一旦放置場所を通り過ぎ、町にある商店で飲料を購入した。

丸ノ内線500形は国道の北側と崖の南側の広場に放置されている。12両が搬入されると一部記事には書いてあったが、この場所に放置されていたのは計9両で、内訳は300形ラッピング車の306と328号車。500形ラッピング車の746と783号車。500形原色の713、753、772と788号車。900形原色の915号車。
ラッピング車両については床下機器が残っているが、原色の車両は床下機器が撤去されている。台車が2両分有り、モーターは撤去されていた。
当初の設置場所は、画像を判読する限り、この場所より少し離れた国道南側の離れたモーターホーム団地の横だったようだ。746と783号車については台車に載せられオンレール状態で置かれていたが、何らかの事情でこの場所へ移設された。移設後、車体は台車に載せられることなく地面に直接置かれた。

ここは地元民のインスタ映え兼ストレス発散スポットとなっている。荒らされた車両達は新砂あゆみ公園に置いてあった東西線5000系カットボディ以上の悲壮感を放っていた。車体は巨大なキャンバスとなり落書きがされ、ガラスは全て壊され風通しの良い車内に。車内も破壊され尽くされて座席や部品が散乱し、これ以上破壊するには重機が必要と思うぐらい荒廃していた。一方、空気が乾燥しているため、錆による腐食は見られなかった。

帰りは少し遠回りになるが、舗装されている国道7号線経由で空港へ向かった。未舗装路でガタガタ走るのは避けたかった。市街地渋滞や久しぶりの坂道発進でマニュアル車ならで苦労が何回かあった。市街地の細い道ではスピードバンプ、インドネシアでいうボリシティドゥールが多数設置されていた。燃料を満タンにして、ネウケン空港に帰着する事ができた。
帰りの飛行機もアルゼンチン航空。週末ということで夕方以降出発の便は遅延を雪だるま式に抱え込んいて1時間延での出発だったが、ブエノスアイレスに戻る事ができた。

パタゴニアに放置された丸ノ内線500形9両
赤い貴公子の廃車体
ブエノスアイレス地下鉄B線R編成の先頭車
丸の内線500形の車体と台車
南米のパタゴニアの日差しに照らされる
広大なキャンパスにされてしまった500形の廃車体
エサを求め口を動かす緋鯉のよう
丸の内線500形の車窓より
アルゼンチン ブエノスアイレス地下鉄B線300形廃車体 306号車と328号車
元R編成車両は床下機器が残る
荒らされた元営団丸ノ内線300形の車内
方向幕の裏側
方向幕の駅名順序表の日本語が残っていた
荒らされた元営団丸ノ内線500形の運転席
荒らされた元営団丸ノ内線500形の車内
アルゼンチン ブエノスアイレス地下鉄B線788号車廃車体 元営団丸ノ内線500形788号車
アルゼンチン ブエノスアイレス地下鉄B線788号車廃車体 元営団丸ノ内線500形788号車
アルゼンチン ブエノスアイレス地下鉄B線788号車廃車体 元営団丸ノ内線500形788号車