2016年7月に丸ノ内線500形の584, 734, 752, 771号車がアルゼンチンから帰国し、中野工場へ到着しました。
584, 734, 771号車は、車体の復元と修繕のため2017年3月から8月にかけて新木場CRに入場していました。
写真は2017年3月に撮影した中野工場搬出作業。
方向幕、全面窓の編成表記、側扉上や窓のステッカーはB線時代のままでした。
入場前は上の写真のように肌が荒れくすんでいましたが、出場時は赤くつやつやの肌で出場しました。
帰国から新木場CR出場までを振り返ります。
500形とアルゼンチン
鉄道雑誌に掲載された譲渡広告がきっかけでアルゼンチンに支社を持つ現地貿易業者の目に留まり、
標準軌、第三軌条方式よる集電方式、600Vの電圧がブエノスアイレスの地下鉄B線と一致したため、
1994年から1996年にかけて500形131両がアルゼンチンへと渡り、
ブエノスアイレスの地下鉄で再び活躍することとなりました。
現地の鉄道ファンからはEidan500やミツビシ(三菱車)と呼ばれ親しまれています。
ミツビシと呼ばれているのは主な機器が三菱電機製からと思われます。
500形の譲渡から20年以上が経過している今も地下鉄B線で活躍中ですが、
近年では老朽化のため、一部がスペインのマドリード地下鉄中古車のCAF6000に置き換えられています。
また活躍中の車両は赤色のまま活躍している編成もありますが、
落書き被害や塗装面の劣化からか、黄色に塗装変更された編成やラッピングが施された車両もあります。
廃車になった約30両の中から4両がSABSEから東京メトロに寄贈され、里帰りが実現しました。
里帰りできなかった廃車車両については約20両が活用または放置されています。
中野工場への里帰りについて
2016年7月11日に4両が横浜港に到着しました。
5月の出港まではラプラタ川の右岸にあるザーラテ港にて留め置かれていました。
車体は白いフィルムで梱包され、台車ごとマーフィーに積載されRORO船で輸送されました。
横浜港到着の様子はYoutubeの東京メトロ公式チャンネルにて確認することができます。
大黒ふ頭での積み込み時に白いフィルムが外され、落書き被害にあった車体が露わとなりました。
落書きの上に半透明フィルムや養生テープが貼り付けられましたが完全に覆い隠すことはできず、
痛々しい姿での陸送でした。
中野工場搬入後はブルーシートで包まれ車庫の片隅に留置されていました。
新木場CRでのレストアについて
584, 734, 771号車の3両は新木場CRにて復元のため車体の本格的なレストアが行われることとなり、
2017年3月に中野工場から搬出され、約5か月間新木場にて工事が行われました。
新木場行きの3両は落書きと汚れが落とされた状態で陸送されました。
特に584号車の片方の側面すべてがべっとりと落書きされていましたから、
除去に大変な苦労と工数がかかったのではないかと思います。
傷んだ外装の修繕・復元と内装工事が行われ、一部床下機器にも塗装が施されているのが確認できました。
帰国後3回目の陸送は一部がラッピングされた姿で陸送されました。
白いフィルムで前面と妻面が全て覆われ、側面は窓から下と車体番号部分が覆われました。
また584号車については側扉全体がラッピングで覆われていました。
3両はそれぞれ登場時、B修時、B線活躍時での姿で復元されるとのことですので、
584号車が登場時、B修時が734号車、B線時が771号車と推測します。
まず、500形登場時の姿に復元されたと思われる584号車についてです。
里帰りした4両の中で唯一、方向幕両脇にランプがあり前面窓が原形の車両です。
新木場CR入場前と出場後の姿を比較すると、貫通扉回りの幌台座と誘導無線アンテナが撤去され、
アンチクライマーと渡り板が交換されているのがわかります。
入場前はベニヤ板で塞がれていた貫通路ですが、出場後は貫通扉が取り付けれられており、
中央には切り文字式の車番がつけられているようでした。
側面に注目すると、側面の車体番号表記も切り文字式のようです。
窓のサッシはアルミ無塗装でしたが、赤い塗装が施されています。
側扉部全体がラッピングで覆われており、扉はまだ入っていないようで、
内側の開口部はベニヤ板のような茶色い板で塞がれていました。
登場時の姿に戻すということであれば大窓の側扉に交換される可能性があるのではないでしょうか。
次に、734号車と771号車についてです。
前面窓及び側扉窓のHゴムですが入場前は黒でしたが出場後はグレーになっています。
内装の化粧板は734号車がピンク、771号車が白系でした。734号車がB修時、771号車がB線仕様になるのでしょうか。
床敷物も交換されたようで養生されており、柄や色については搬出時点では確認できなかったです。
B線仕様は広告や表記類もアルゼンチン仕様に戻されるのかが気になります。
出場時点ではB線活躍時のステッカー類はすべて撤去されていました。
さて、新木場車両基地の線路の幅は狭軌、中野工場は標準軌ですので異なります。
新木場車両基地の南西には標準軌と狭軌に対応した三線軌条が保線車の車庫から数百メートル延びていますが、
その線路以外は狭軌です。
そのため新木場では500形3両はメトロ7000系の廃車発生品の仮台車に車体が載せられていました。
アントに牽引され狭軌の架線下を走る丸の内線500形が見られたのは新鮮でした。
B線はCAF6000対応のため架線が追加されたため、前の仕事場を思い出していたのかもしれません。
足回りについて
2017年8月の中野工場搬入時の台入れ作業時に台車を見ると、中野初回搬入時マーキングもそのまま残っていたため、
再塗装はまだ行われていないようでした。台車については今後レストアを行うのでしょうか。
B線仕様に合わせるにあたって現地にて足回りに以下の点についても復元が行われるのでしょうか。
1.第三軌条集電装置の取り付け位置の変更
2.床面高さを80mm上げる(台車を改造)
また、撮影した画像を確認すると一部台車にCAF BOGIEと書かれた銘板が取り付けられているのが確認できました。
現地の検査についてはスペインのCAF社に委託していたとのことですので、
台車の管理用や修理時などに取り付けられたのでしょうか。
公開などで近くで見れる機会があれば確認してみたいと思います。
アルゼンチンで廃車になった500形の再利用について
現地にて廃車になった500形うち約二十両が再利用または保管されています。
不要となった500形は鉄道会社から解体業者に払い下げられました。
解体業者がインタネットのフリーマーケットサイトに出品し転売されました。
900形1両に買い手が付き、ブエノスアイレス郊外のレストランの客席として利用されています。
解体業者の敷地内を衛星写真で確認すると、500形が十数両が留置されているのが確認できます。
払い下げから約1年経過していますが、スクラップを免れているようです。
今後の転売用の在庫なのか気になります。
また、ブエノスアイレスから約1000㎞離れたパタゴニアでは商業施設として活用予定の車両が保管されています。
確認できただけで約10両が留置され、再就職の時を待っています。
500形大黒ふ頭にて
500形横浜港到着は2016年7月11日でした。陸送まで10日ほど大黒ふ頭で保管されました。
バス停から降りて少し歩くと、数えきれないほどのスバル車と大型ダンプの黄色いベッセルの向こうに
白くて大きな箱が数個ありました。
貫通扉部分のフィルムが割かれており、風が吹くとひらひらめくれていました。
Leandro N. Alem行きの方向幕と赤い車体が時折見え、白い箱は500形ということがわかりました。
赤い貴公子ならぬ白い貴公子?
マーフィーに積載された木箱が500形の前に置いてありますが、この時はすぐに動きそうな気配は無し。
こちら側から撮影すると足回りを確認することができました。
この白いフィルムの下の車体は落書きだらけだったとは思いもよらず。
584号車
2016年7月11日横浜港着→7月20日大黒積み→2017年3月14日中野工場積み→8月25日新木場積み
大黒ふ頭から中野工場への陸送。
こちら側は落書き被害に遭っていませんが、反対側は側面全体に落書きがされていました。
新木場入場前の姿。側面の落書きが除去されています。
貫通幌の台座、手摺、渡り板、アンチクライマー、誘導無線アンテナに注目。
新木場出場後の姿。
ラッピングされていますが、貫通路回りがフラットになり幌の台座が撤去されたことがわかります。
アンチクライマーと渡り板が交換されました。誘導無線アンテナは撤去されています。
手摺も新規のものでしょうか。
771号車
2016年7月11日横浜港着→7月20日大黒積み→2017年3月15日中野工場積み→8月24日新木場積み
771号車の側面に落書きの上に養生テープのような緑色の半透明素材が貼り付けられていました。
側面のステップがあった位置が一目でわかります。
中野工場で落書きが除去され新木場CRへ陸送される771号車。
全面窓運転席側右上部にはU編成を示すステッカーが残っていました。
白いラッピングがされていますが、鮮やかな赤でツヤツヤの美しい仕上がりが分かると思います。
734号車
2016年7月11日横浜港着→7月21日大黒積み→2017年3月15日中野工場積み→8月24日新木場積み
多くのファンに大黒ふ頭を出発した734号車の陸送。
中間に封じ込められていたからか方向幕周辺や屋根上が黒く汚れています。
新木場入場時。こちらの側面は大黒ふ頭からの陸送からあまり変化していないように見えます。
新木場出場時。夜間でも目立つ鮮やかな赤。側扉窓のHゴムが灰色になっています。
734号車の方南町方台車の台入れ作業。
台車枠中心部に楕円形の住友金属の銘板がついていますが、
その左隣にCAF BOGIEと書かれた四角い銘板が取り付けられています。この銘板の正体はが気になります。
752号車
2016年7月11日横浜港着→7月21日大黒積み→中野工場残留(部品取り?)
大黒ふ頭発中野工場行きの752号車の陸送。
2017年2月の銀座線1000系1140編成が中野工場に搬入される際に752号車の姿が確認できました。
ズームして撮影するとライト周りの落書きは除去されたようですが、方向幕下はまだ残っていました。
また、ライトケース一式が取り外されており、開口部は養生がされています。
参考文献
丸ノ内線車輌アルゼンチンで活躍 JREA VOL.39 No.10
東京メトロ 旧500形車両 里帰り「大黒ふ頭船降ろし」
enelSubte.com