日本製気動車 KRD MCW302で運行中のバタラクレスナ号

2025年2月1日より、ウォノギリ線のバタラクレスナ号が、INKA製のレールバスに代わり、日本製ディーゼルカーのKRD MCW302で運行されるようになりました。MCW302の定期運用は、この路線が唯一ですので、座席夜行列車で約7時間かけてジャカルタからソロへやってきました。
KA BATARA KRESNA
本日の編成は、ウォノギリ方から、1号車 K1 3 82 01 SLO 40PNP、2号車 K1 3 82 03 SLO 40PNP、3号車 K1 3 87 01 SLO 16PNP (トイレ・発電機付き)の三両でした。全車冷房化とリニューアルがされているため、とても快適です。
この列車の始発駅、プルウォサリ駅の留置線には、MCW302改造のレールクリニックも留置されていました(写真右)。
終点のウォノギリ駅までは約1時間の道のりです。プルウォサリ駅からソロコタ駅間は併用軌道となっており、フルサイズの気動車が自動車やバイクと一緒になって約20分かけて走る区間が見所です。運賃は、補助金が投入されているため、4000ルピアとかなり安価です。

KA BATARA KRESNA
MCW302の側面に掲出されたバタラクレスナ号のサボですが、このサボはKA BOGOWONTOのサボの上に印刷済みのシートを貼ったものでした。左側にはBKが四角く囲ってありまして、路線図のナンバリングもBK○○となっていたのでバタラクレスナ線ということなのでしょうか。
中扉を埋めた個所には、スマランで運用されていた時の列車名「Kedung Sepur」の文字が入っていましたが、白いカッティングシートが貼られて覆い隠されていました。

KA BATARA KRESNA
プルウォサリ駅~ソロコタ駅間の併用軌道区間です。線路は道路の南端に敷かれており、植栽の間や交差点からライダーやドライバーが飛び出てこないよう警笛を鳴らしながら、15~20km/hでゆっくりと走っていました。
車窓を眺めていると、車やバイクのほうが速く、次々に追い抜かれていきます。この遅さを利用して、自転車やバイクで列車と並走しながら手を振ったり、スマホで撮影したり、追っかけ撮影をする江ノ電ニキならぬバタラクレスナニキ(?)を複数名見かけました。
併用軌道区間では、度々衝突事故が発生しており、バタラクレスナニキ(?)が撮影した、MCW302が車に衝突する動画が話題になっていました。動画では、植栽部分から道路に出ようとした車が、列車通過5秒前に車のフロントを軌道敷まで出してしまったため、MCW302のブレーキが間に合うわけもなく、車と衝突する様子が収められていました。説明によるとMCW302の方は大きな破損は無かったようで、数分の遅れで運転再開したとのことです。
今回の乗車でも、長い警笛が鳴ってブレーキがかかったので、もしやと身構えることもありましたが、警笛が鳴り止み再加速をしたので一安心。無事併用軌道区間を通過できました。しかしながら、ソロコタ駅から先の郊外区間でも、MCW302との踏切事故が少なくとも数件発生しており、2月に赤い車1台、3月に銀色の車1台と衝突しているので油断はできません。

KA BATARA KRESNA
2023年にソロコタ駅で撮影したINKA製レールバスで運転されていた時のバタラクレスナ号です。このレールバスは3両編成の連接車、ディーゼルエレクトリック方式、設計最高速度は120km/hというスペックですが、1980年代に製造された古い日本製気動車に置き換えられた後のほうがスピードアップが図られ所要時間が短縮されています。

KA BATARA KRESNA
ソロコタ駅を出ると、列車は一気にスピードアップ。変速段から直結段に入れて、70km/hで走行します。
車窓が田園風景となり、代掻きをしたあとの田、田植えが終わったばかりの田、青々とした絨毯のような田、稲穂が実り黄金に輝く田と移っていくのは、二期作三期作ができる熱帯ならではの光景。日本だと5月の連休中は兼業農家が田植えを行う時期ですね。

KA BATARA KRESNA
スコハルジョ駅からは、遠足の子供たちと引率の先生のご一行が乗ってきて、終点駅までにぎやかな車内で過ごすこととなりました。

このMCW302の車内ですが、改造前は客室内にJNRのにおいが漂っていましたが、スマトラの空港線への転属を前提として、冷房改造と大規模なニューアル改造がされ、客室内のJNRのにおいが消えてなくなりました。
座席は、上級のEksekutif客車と同じ物が採用され、座り心地が良く快適です。なお、座席の回転機構とテーブルは撤去されていました。
スマトラの空港線にはMCW302改造車ではなく、別の車両があてがわれたため、MCW302改造車はジャワにとどまることになり、こうして今はバタラクレスナ号で、MCW302最後の定期運用車両として走っています。

KA BATARA KRESNA
1時間の列車旅が終わり、列車を降りると、スコハルジョ駅から乗ってきた遠足の子供たちと運転士さんとのハイタッチ行列ができていました。運転士さんは人気者。よい光景です。

KA BATARA KRESNA
終点のウォノギリ駅の駅舎。小さな地方の駅ですが、駅前は交通結節点となっており、バスやアンコタが発着していました。駅前食堂や小さな商店もあります。

KA BATARA KRESNA
ウォノギリ線の終端。車止めの先には民家。この光景、トーマスが駅長の家に突っ込むシーンを思い出してしまいます。

KA BATARA KRESNA
終端側から駅方面を振り返ります。腕木式信号が現役です。

KA BATARA KRESNA
昔ながらの腕木式信号が使われていて、列車は一日2往復しか走らないローカル路線ですが、軌道改良が済んでおり、コイルバネ台車のMCW302でも良い乗り心地でした。この駅のレールやマクラギは2023年製で、パンドロール締結のPCマクラギと54キロレールが使用されています。
日本の地方鉄道事業者向けに、国・県・沿線自治体で協調補助を行って、PCマクラギ化の事業者負担を少なくする補助制度がありますが、ウォノギリ線は国鉄の路線ですから国の事業として行ったのでしょうかね。

KA BATARA KRESNA
プルウォサリ駅方の3号車。リニューアル時に車内床上に電源供給用の発電機が設置されたため、運転席側前半分が機械室となっています。トイレは妻面寄りに設置されています。

KA BATARA KRESNA
運転台は進行方向右側にあります。キハ40の運転台のような雰囲気で、JNRのにおいがしました。

KA BATARA KRESNA
窓上にあるのは発電エンジン用の給油口でしょうか。側面の運転台寄りにある銀色の巨大なガラリが目を引きます。

 

KA BATARA KRESNA
全車片運転台の先頭車なので、中間に挟まれる先頭車が出てきます。間に挟まれた運転席のガラス窓が白いウロコだらけでしたので、検査時を除いて先頭に出る機会は少ないのでしょう。

KA BATARA KRESNA
車内の中間車と先頭車の連結部分。

KA BATARA KRESNA
車掌室の扉が開いていたので中を見てみると、車掌弁とドアスイッチからJNRのにおいがしました。

KA BATARA KRESNA
3号車の妻面側から乗務員室方向を見ています。3号車は、壁の向こうの機械室に搭載された電源供給用の発電用エンジンと走行用エンジンとのデュエットが味わえます。
走行用エンジンは「信頼性あるのDMH17H」からカミンズ製に換装されています。

KA BATARA KRESNA
ウォノギリ駅では、乗ってきた列車にまた乗って折り返すという、列車に乗ることが目的の乗客が多くいました。私もその一人だったわけですが。スコハルジョ駅から乗ってきた遠足の子供たちもそうでした。
こうして、1時間かけて無事プルウォサリ駅に戻ってきました。貴重な日本製KRDに乗れて大満足。

レールライブラリー
プルウォサリ駅の留置線では、ウォノギリ駅へ出発する前に見かけた日本製MCW302がベースのレールライブラリー・レールクリニックとドイツKRUPP製の蒸気機関車D52 099が並んでいました。
レールクリニックとは、線路の検測車ではなく、文字通りクリニックで、交通手段が列車しかなかったり、医療空白地で活動する車両です。レールライブラリーも文字通り図書館です。4両編成となっています。
D52 099は復活蒸気の動態保存機で貸切列車で活躍しています。

その他のMCW302改造の事業用車(ビーム越し)

KAIS 3
マンガライ工場内に留置されていたKereta Inspeksi KAIS 3。

NR Djoko Tingkir
デポック電車区で車両入換に従事していたNR Djoko Tingkir。
中古電車の回送では、パソソ駅からこの2両で10両編成を牽引していました。さすがに動き始めはエンジンを唸らせて車輪を空転させながらの加速でしたが、運転士の技量もあって、だんだんと速度をのせて回送していたので、意外と力持ちであることを実感しました。